— 借主向け・正しい対処手順と実践ガイド —
賃貸住宅での生活で最も多いトラブルのひとつが「騒音問題」です。隣の部屋や上階、下階からの足音、大音量の音楽、夜遅くまでの生活音――こうした日常音が繰り返し気になると、睡眠障害やストレスなど生活の質に大きな影響が出ます。実際に賃貸居住者からの苦情として「騒音」は常に上位に入る問題です。
本稿では、借主目線での適切な対応手順をステップごとにわかりやすく整理しました。法律や礼儀、実務的な窓口を踏まえ、感情的にならずに冷静に対応できるように設計しています。

はじめに
「騒音」とは何か
まず理解すべきなのは、騒音は単に「うるさい音」ではなく、生活環境・住環境に支障をきたす音全般を指すということです。
たとえば、テレビや音楽の音漏れ、足音、家具の移動音、洗濯機・掃除機の稼働音、ペットの鳴き声などは、時間帯や状況によっては騒音トラブルの対象になります。日本では一般的に「静かにすべき時間帯(いわゆる静粛時間)」として22時〜翌朝7時ごろを目安にする物件が多いのですが、これは法律で定められた義務ではなく、地域や建物ごとのルールやマナーとして捉えられています。
法律的には「公害としての騒音規制」は自治体によって対応されますが、日常生活音は民事上の問題となることが多いため、まずは対処の流れを理解しておきましょう。
① まずは自分で状況を確認する
■ 騒音の実態を把握する
騒音トラブル対策の第一歩は、客観的な事実の確認です。
★日時・時間帯
★音の種類(足音・話し声・音楽など)
★継続時間・頻度
★場所(上階・隣室・下階からか)
こうした項目を簡単でも毎日記録すると、その後の相談や証拠整理に役立ちます。また、音が自分の部屋から発せられている可能性もあるため、自分自身の生活音についても振り返ることが有効です。
スマホのボイスレコーダーやメモアプリを使って、日時入りで証拠を残すのは非常に有効です。これらは後の管理会社・警察・調停の際にも役立ちます。
■「自分の音」も見直す
騒音トラブルの多くは、当事者自身が無自覚に日常音を出しているケースもあります。
- カーペットやラグを敷く
- 家具の脚にフェルトを貼る
- ソフトスリッパの使用
- 深夜は洗濯機や掃除機の使用を避ける
こうした生活上の工夫で、騒音を大きく減らせることもあります。
特に集合住宅は壁や床が薄いことが多いので、自分の住まいの遮音性を理解することが先決です。

② まずは穏やかに伝える(直接・間接)
■直接の意思表示
日本の文化では、「直接クレームを言う」ことは必ずしも推奨されませんが、相手が外国人であれば文化の違いで気づいていない場合もあります。
- ポストに控えめなメモを入れる
- 挨拶がてら軽く声をかける(日本語が可能であれば)
例文(日本語):
いつもお世話になっております。
○○号室の[名前]です。
最近夜に足音や低い音が気になっております。
もし可能でしたらもう少し静かにしていただけると助かります。どうぞよろしくお願いいたします。
■ 間接的な意思表示
直接話すのが難しい場合や、相手との関係を悪化させたくない場合は、管理会社・大家さんへ相談が基本です。管理会社は中立的な立場で仲介や注意喚起をしてくれるため、当事者同士が対立するより穏便です。
■管理会社・大家さんに相談する
管理会社(管理人)や大家は、賃貸契約上の当事者でもあります。騒音トラブルがある場合は、まずは管理会社・大家に相談・報告しましょう。
管理会社の役割としては:
- 入居者全体への注意喚起
- 当事者への連絡・注意
- 契約上のルール説明
- トラブルの記録・記載
などが期待できます。管理会社に動いてもらうことで、当事者間のトラブルを避けやすくなります。
コミュニケーションは記録に残るよう、メールや書面で行うことを心がけましょう。

③ それでも改善しない場合の次の対応
行政の相談窓口
住んでいる自治体の生活環境課・公害相談窓口では、騒音についての助言・仲介をしてくれることがあります。
自治体によっては無料で相談可能な窓口もありますので、早めに利用しましょう。
警察への相談(110通報)
騒音が日常生活の範囲を超え、危険性や重大な迷惑行為(深夜の大音量・暴力的な音など)がある場合には、110番で警察へ相談することもできます。
ただし、一般生活音の相談は本来行政・民事の範囲であり、警察はすぐに介入できない場合もあります。
ですが、ケースによっては注意喚起や現場確認をしてくれることもあります。
④どうしても改善しない場合の法的手段
管理会社・自治体・警察でも解決しない場合は、法的な手続きを視野に入れる必要が出てきます。
具体的には:
- 調停(ちょうてい):家庭裁判所での交渉の場。比較的低コストで第三者の調整が入る。
- 損害賠償請求・慰謝料請求:騒音が生活を著しく害している場合、民法上の不法行為を根拠に請求する方法。
- 訴訟:最終手段として裁判所に申し立てる方法。
これらは時間・費用がかかる可能性があるため、弁護士や法律相談センター(例:法テラスなど)にまずは相談するのがおすすめです。
感情的行動は避ける
騒音トラブルで感情的な行動(壁を叩く、仕返しをする、直接の怒鳴り込みなど)は、関係悪化・リスク増大を招きます。日本では穏便な解決が好まれる文化でもあるため、冷静な対応が大切です。
長期的な良好な関係づくり
騒音トラブルの予防には、日頃からのコミュニケーション・気配りが役立ちます。
- 引っ越しの際の挨拶
- 共有部分での礼儀
- 趣味や生活パターンの共有(できる範囲で)
こうした配慮は騒音トラブルを未然に防ぎ、快適な生活環境を作るうえでも重要です。

まとめ:借主向け騒音トラブル対処の手順
1.客観的に音を記録・把握する
2.自分の生活音も見直す
3.穏やかに伝える(メモ・挨拶・間接方法)
4.管理会社・大家へ相談
5.自治体の窓口・警察へ相談
6.法的手続きを検討・専門家に相談
7.感情的行動は避ける
8.長期的な生活配慮でトラブル予防
騒音トラブルは誰にとってもストレスです。
しかし、冷静な対応と適切な手順を踏めば、感情に流されずに解決に近づけます。
まずは記録、次に管理会社相談、そして必要に応じて行政や法的対応へ――という順序を心がけましょう。








